今日は一日承太郎に付き合って貰って無事に買い物ができた。 そのお礼も兼ねて昼ご飯を奢ろうと思ったら、完全拒否。 休日を潰しちゃったお詫びもしたかったんだけど。 それでも私が買ったポテトを食べてくれただけでも嬉しかった。 それにしても横顔素敵だよ。すっごい凛々しいよ。 通った鼻筋や厳つい眉毛……目つきの悪いその目! がっちりとしたその体つき。漫画では髪の毛とつながっている学帽。 全てがいいッ!! いくら見続けてもにやにやが止まらない。 本人は気付いているのかないのか分からないが、ポテトを食べていることは確かだ。 そこで不意に肩を叩かれる。 当然の如く承太郎ではない。 じゃあ誰?と思い振り向く。 そこには柄の悪そうな所謂ゴロツキ的なのが五、六人いた。 中には不良と思われる学ランを着ている奴も居た。 そう言えば承太郎も不良らしいんだよね、忘れてた。 私は肩に置かれた手を睨み、次に相手と向き合う。 「……なんですか?」 「いいねぇ承太郎。お前にこんな可愛い女居たのかよ」 「そういやこの前はお前に随分世話になったよなァ」 いやいやいや。私の質問には完全無視ですか。 ゴロツキ共は私達を取り囲むように近付いてくる。 当の承太郎は何食わぬ顔でポテトを食ってる。 いや、ポテト食う顔かもしれない。 ここは私の肩にゴロツキの手が触れた時点で 「俺の女に触るんじゃねえッ」と一発かまして欲しかった。 04 人目に付くから とやっとこさで動いた承太郎が連れられたのは、人通りの少ない場所。 栄える町並みがあれば逆に廃れる町並みも影にあるっていう感じ。 そこは廃ビルとかそれらの廃墟に近い場所が隣接して建っている。 他には本当に時々車が通る程度の、行き交いが少ない道路があるくらいだ。 相手を見くびっているのか、本当に強くないのか…それとも戦闘体制に入ってないのか。 そこら辺は承太郎本人にしか分からないが、律儀に重い荷物をここまで運んできてくれた。 結構な荷物なのでバーゲンに行った後のおばちゃんみたいな格好をしている。 ああ緊張感がなさすぎるな、自分。 私もきっと承太郎も、本当ならこんな奴らは無視して帰ろうと思っていた。 だがしかし問題が発生したのだ。 私が人質に取られてしまったから帰るに帰れない。 そもそも私が人質になってしまった経緯を説明しよう。 話は時を遡り某ファーストフード店に居た時。 全くゴロツキ達を眼中に入れない承太郎はポテトを完食すると、この状況で帰るか なんて空気読めない発言をする。 その発言には流石にゴロツキもキレた。 「おいこっち向けよォ!」 「こいつがどうなってもいいのかァ!?」 一人は私を立たせてそのままはナイフを喉元に突きつけた。 勿論店内はざわついた。 流石に固定される体制は腕が痛む。 警察に通報すべきか否かとひそやかに聞こえる。 承太郎は小さく溜息を吐いた。そして低い声で言う。 「そいつはどォーでもいいが、売られた喧嘩は勝ってやるぜ。 言っておくがそっちが先に手ェ出して来たんだぜ」 「この間の恨み晴らしてやるぜぇ!」 ゴロツキは嬉々とし私にナイフを突きつけたまま、 そう言って店の外に出て人気のない場所に向かって現在に至る。 以上簡単な説明でした。 私の状況はと言うと、最年少の不良に捕まり喉元にナイフを当てつけられてる。 たまに先端部分がちくりと触れて痛い。 互いに無言のまま向き合っていたが、承太郎が口を開く。 「俺を倒してぇんならそんな女いらねぇだろ」 だから離せ、と言う。 しかしゴロツキ共は鼻で笑い飛ばす。 「まさかあの承太郎が女を連れてるなんてなァ」 「俺達はこんな女なんかどうでもいいけど……」 「どっかにサンドバックねぇかなー」 最後に言った一人はシュッシュッと殴る素振りを見せる。 口々に言いたい放題だが、ようは殴らせろって事らしい。 私は承太郎が殴られる姿なんて見たくない。 「承太郎、気にせずこいつら倒しちゃえ」 「ああッ!?うっせぇなぁ人質のくせによォ」 自分らが不利になることを恐れたのか、私を抑えてる不良が私の髪を鷲掴みにする。 そして顔を近づけて怒鳴り散らす。 髪の毛たくさん抜けそうだからやめて欲しい。 「……」 承太郎は何も言わずにただ立っている。 何かを考えているのか、殴られようとしているのか。 いやいや後者はない。 「おい承太郎。なんとか言えよ」 「黙ってんじゃねェぞ!」 最後に声を上げた奴が、承太郎の左頬を殴ろうとする。 承太郎は呟くように やれやれだぜと言ったように思えた。 「俺は殴られねえ。そいつには傷付けさせねえ」 そう言うと承太郎の背後からもう一人、影のような人間が出てきた。 承太郎のように大柄な男の人―――幽波紋だ。 まだ暴走しているのか、発現距離を感じさせないくらい自由に動いている。 そしてスタンドはゴロツキ4人をボコボコに殴った後にすぅっと消えた。 それぞれ うっとか ぐあっとかやられ声を上げ、倒れた。 「……ッ」 「……あら、まあ」 承太郎は表情を変えていない。あっけなかったのかなあ。 あまりの速さにあっけに取られてしまったが、承太郎のスタンド…もといスタープラチナが見えてよかった。 私に見えなかったらもしもの場合、スタンドを使える可能性がなくなってしまうからね。 殴られた4人は床に倒れこみ伸びてしまっているようだった。 しかし打たれ強いのか、最年長と思われる30代半ばくらいの男が立ち上がり、 今度はヌンチャクを私の首に巻きつけた。 ヌンチャクの使い方が間違ってる なんて思ったけど言えない。 「ん、ぐ…っ」 「……何やってやがる」 「う、うるせぇッ」 男が声を上げると同時に、ヌンチャクに込める力が強まる。 首が絞まり ぐぇと声が漏れた。 苦しさと涙で歪んだ視界に映るのは、動きだそうとしている承太郎。 ……と、その後ろには夢で見たあの毒々しい猩々緋色の目をした白い兎が居た。 承太郎は男を殴るべく拳に力を入れて動き出す。 普通の兎よりは大きめなその兎は、物凄いスピードで向かってきた。 そして承太郎が男を殴るのと同じくらいのタイミングでヌンチャクの一部に触れる。 するとその触れた部分が壊れていく。 まるで最初からそこには何も無かったかのような。 「あ、りが……げほっ、げほげほ……ッ」 「無理すんじゃねぇ」 その場に倒れこむように崩れるが、承太郎が腕を掴んで身体を支えてくれた。 お礼を言おうとしたが咳き込んでしまい、苦しいが新鮮な空気が肺に染み渡る。 背中をさすってはくれないけど横目で私の様子を見てくれている。 どうせなら正面から見てくれたっていいのに。 だがすぐに横目で見ていた理由を理解した。 耳がいいのか承太郎は遠くから鳴り渡るパトカーのサイレンの音を聞き取っていたらしく、一言呟く。 「不良が警察に通報したらしいな」 と学帽を深くかぶり直した。 この動作はきっと癖なんだろうな。 ……じゃなくて。この後どうなるんでしょうか。 ウーウーと鳴り響くサイレンが耳障りにも思える。 この状況を見て、事を説明して無事に済めばいいな と願うのみだった。 やがてパトカーから警官が数名下りて来て、何かを叫んでいたが私の耳には届かなかった。 BACK<<★>>NEXT 2009/07/05 修正 躑躅色から猩々緋色に訂正致しました。 猩々緋色とは→★ |